販売促進費とは、販売促進のために用いられる費用のことを指し、商品・サービスのPRや、商品ブランド力の強化のための支出が該当します。
しかし、広告宣伝費や交際費など、他の勘定科目との線引きが明確で無いため、仕訳の際に悩む経理担当者の方も多いでしょう。法的な問題や、税務上の問題は生じませんが、企業の経理作業においては、仕訳を明確に適切に処理しなければなりません。
そこで本記事では、販売促進費とは何か、類似した勘定科目との違いについて分かりやすく解説いたします。
目次
販売促進費とは?
販売促進費とは、販売促進に用いられる費用のことを指します。
販売促進費に該当するものとして、以下の例が挙げられます。
・「ノベルティ」「サンプル」の作成・配布費用
・展示会・見本市の開催にまつわる費用
・販売手数料
・実演販売にかかる費用
・景品やプレゼントの配布・購入費用
・販売報奨金にかかる費用
など
上記の例で挙げたような、商品サンプルや景品の配布や、キャンペーンの開催にかかる費用が該当します。
ただし「損金で算入できる」という条件のもと、固定資産や工具器具備品として資産計上する必要があるものへの支出は、原則的に、販売促進費には該当しません。
そして上記の支出例の中でも、販売促進費に該当するものは、目的が販売促進である場合に限られます。同じものに対する支出であったとしても、目的によって勘定科目が異なるため、混同しないように注意が必要です。
似ている勘定科目との違い
販売促進費について説明しましたが、勘定科目の中には、そのほかに販売促進費と似たものがいくつかあります。
それが広告宣伝費、交際費、外注費、支払い手数料、売上割戻しの5つです。
以下で、それぞれの特徴と相違点を説明します。
広告宣伝費
広告宣伝費とは不特定多数の人を対象とした、自社サービスや自社商品を広範囲にアピールするための費用のことを指します。
広告宣伝費も販売促進費と同じく、販売費及び一般管理費に該当する費用です。
実際のところ広告宣伝費と販売促進費の間に、明確な違いや法的な基準が定められていないため、そこが経理担当者を悩ませる原因でもあります。
大まかに言える違いとしては消費者や取引先との関わりが間接的なものであるかどうかです。
展示会や実演販売のように、商品やサービスを特定の人に見てもらうのではなく、不特定多数の人に宣伝するための支出が、広告宣伝費に区分されます。
広告宣伝費に該当する具体例は以下の通りです。
・企業案内のパンフレット・広告ポスターの制作費
・テレビ・インターネット広告の制作費
・雑誌や新聞などの情報誌への掲載費
など
関係性としては、販売促進費というジャンルの中に、広告宣伝費が含まれているという関係性です。
「宣伝のための広告を用いたPRにかかる費用が広告宣伝費」
「直接的な販売にかかる費用が販売促進費」
とそれぞれイメージできます。
とは言いつつも、実際の仕訳では、事業主の判断に寄るところが大きいため、自社や取引先、税務署が混乱しないように、分かりやすく分類しておきましょう。
交際費
交際費とは、お得意先や仕入先、その他事業に関係のある人など「特定」の事業関係者に対する接待、供応、慰安、贈答にまつわる費用のことを指します。
「直接的にアプローチして販売を促進する」販売促進費と似ている性質を持っていることから、交際費と販売促進費の区別に悩む担当者の方もいます。
交際費として判断する特徴としては、事業の関係者という「特定」の相手が対象になること、広告宣伝を目的にしていないことの2点が挙げられます。
交際費の具体例は以下の通りです。
・取引先を観劇に招待する費用
・特約店の営業社員への報酬(源泉徴収が行われないもの)
・得意先の従業員への謝礼
など
贈答用の贈り物は交際費に分類され、宣伝目的で、社名の入った贈答品を送った場合は、販売促進費として扱われるというイメージです。
また注意する点として、法人の交際費の計上額には、税法上では上限が設けられていることが挙げられます。つまり、法人は販売促進費に該当するのか、交際費に該当するのかによって、損金の総額(経理上の総額)に違いが生じるのです。
外注費
外注費とは業務の一部を社外に委託した際にかかる費用のことを指します。
外注費の具体例としては、自社で必要な制作物のデザインを委託し、委託先の事業者へ支払った費用などが該当します。
支払手数料
支払手数料とは、弁護士や公認会計士、税理士などの外部に支払う報酬のことを指します。
広告宣伝を目的にした販売促進費のように、直接的に販売を促進する費用ではありません。
外注費との違いとしては、外注費は外部の法人・個人と請負契約を締結して、委託をした際の支出になりますが、支払手数料は専門性の高い業務を「弁護士」「司法書士」「税理士」に依頼した際の支出が該当するため、業務の専門性・誰に委託したのかという点で違いが生じます。
売上払戻し
売上払戻しとは、一定期間に多額・多量の売り上げを上げた得意先に対して、売り上げ代金の一部を免除した場合を処理する際に用いられる勘定科目です。
販売促進費は販売費及び一般管理費に属しますが、売上払戻しは売上高から控除されるものになります。
販売促進費は課税対象になるのか?
ここまで販売促進費と似た勘定科目について説明してきましたが、勘定科目とは別に課税するのかどうかも、経理担当者の方が悩む原因だと思います。
そこで販売促進費が課税対象になるのかどうか、以下で説明いたします。
販売促進費の取引においては、原則として消費税がかかります。
ただし、自社で作成したサンプル品や試供品の配布には、材料仕入れ時に消費税がかかるため、販売促進費の仕訳においては、課税の対象外になります。
また海外の取引先へのコミッション支払いなどの輸出免税取引においても、消費税の下位税対象には該当しません。
販売促進費の仕訳例
続いて、販売促進費の仕訳例についてご紹介します。
【例1】試供品を制作し、制作費用として20万円を支払った場合
支出の内容が、販売促進費のみである場合は、上記のような簡単な仕訳になることが多いです。
【例2】販売促進を目的に、取引先に対し、販売奨励金を現金で20万円支払ったのちに、取引先と接待で会食に出かけ、5万円を現金で支払った場合
一方で、販売促進費の他に、違う勘定科の計上が入ってくると例2のように複雑なものになってきます。
【例3】実演販売の開催費用として30万円を振り込み、実演販売会場でパンフレットの配布に10万円を振り込み、実演販売終了後に取引先との会食で現金で5万円支払った場合
現金ではなく、振り込みの場合は、貸方の欄が普通預金などになります。
先述したそれぞれの勘定科目の違いなどを理解した上で、広告宣伝費や交際費が混ざっている場合は混同しないように注意しましょう。
販売促進費と他の勘定科目を使い分けるメリット
ここまでそれぞれの勘定科目の違いや、仕訳例を見てきましたが、実は販売促進費と広告宣伝費は区別しなくても問題が生じない勘定科目です。しかし、区別をすることによって経営分析の観点で役に立つことがあります。
ここでは、勘定科目を区別することでどのようなメリットを得ることができるのかについて、解説いたします。
利益比較
販売促進費の使い分けをすると、物件の例において、利益の比較を次のように行うことができます。
【例】
・販売価格7000万円・製造原価4000万円のA室とB室が対象
・チラシ費用→300万円(全30邸の分)
・家具の費用→200万円(B室の分)
〈A室〉
売上:7000万円
原価:4000万円
販売コスト:広告宣伝費10万円(300万円÷30邸)
利益:2990万円
〈B室〉
売上:7000万円
原価:4000万円
販売コスト:広告宣伝費10万円(300万円÷30邸)、販売促進費200万円(家具代)
利益:2790万円
※例のため、実際の相場との関連性はありません。
販売促進費は、販売促進をしなければ売れない商品・サービスにかけるべきコストとも言えます。そのため、内容を追求する価値は高く、売れなかった理由を解明することで、次回の販売・売上の計上に生かすことができます。
B室の担当者へ売れない原因を調査し、結果が「家具付き物件としての需要がなかった」ということがわかれば、次回から家具を用意する必要はなくなり、200万円の販売促進費を節約することができます。
また広告宣伝費は、すべての商品・サービスにおいて平等に発生するコストのため販売促進費ほど分析の必要性は高くありません。限りのある時間や資産を有効に活用するために、販売促進費と広告宣伝費を支出の目的ごとに分類することで、簡単に比較した上で、適切な経営分析を行うことができます。
コスト管理
先述の、利益の比較では、販売促進費を個別の商品や商品グループに紐づけることが可能となる業種であることが前提になります。しかし、それができない業種においても、完売促進費と広告宣伝費を支出の目的ごとに分類しておくと、簿価を見ただけでコスト面の管理がしやすくなります。
販売促進費は、特定の消費者に買ってもらうための費用として捉えられるため、販売促進費の残高は売上高と関連して増減すると考えられます。もし残高が減少しているのに、販売促進費が減らない、または増加していることがあれば、販売促進費の使い方に問題があるということがわかります。
このように勘定科目を区別することには、主に2点のメリットが存在します。
適切に区別をして、効率よく販売促進を行いましょう。
販売促進費のポイントをおさえて勘定科目の違いを理解しよう!
本記事では、販売促進費の意味や似ている勘定科目との違い、仕訳例などをご紹介しました。
販売促進費は、類似した勘定科目が多く、混同しやすい勘定科目です。しかし、区別しないことによる会計や税務上の問題が生じないことから、適切な処理を行えていない場合もあります。目的を持って、適切に処理を行うことができれば、経営分析に役立ち、有効活用することもできます。
それぞれの勘定科目の特徴を理解して、正しく仕訳を行いましょう。
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