昨今、アプリを活用した販促や集客を積極的に取り入れている企業・店舗が増加しています。そんな中で、アプリ開発・運用を検討中の事業者さまにとって、『アプリを収益化させるためにはどうしたらいいのか?』という点は気になるでしょう。その方法のひとつが「アプリ内課金」です。本記事では、アプリ内課金の基本概念から仕組みや種類、メリット・デメリットを分かりやすく解説します。
目次
アプリ内課金とは
アプリ内課金とは、スマートフォンやタブレットなどにインストールされたアプリケーション内で、追加のコンテンツや機能を購入できる仕組みのことです。ユーザーがアプリをダウンロードした後、App StoreやGoogle Playの決済機能を使ってアプリ内で直接商品やサービスを購入できるという特徴があります。
この仕組みは、主にモバイルゲームやユーティリティアプリ、教育アプリなどで広く採用されています。例えば、無料でダウンロードできるゲームアプリの中で、追加アイテムを購入する場合などがイメージしやすいでしょう。
アプリ内課金のしくみ
アプリ内課金は、下記のような仕組みで機能します。
- ユーザーがアプリストア(App StoreやGoogle Playなど)からアプリをダウンロード
- アプリ内で課金可能なアイテムやサービスを閲覧
- 購入したいアイテムを選択し、決済を実行
- アプリストアの決済システムを通じて支払いを完了
- 購入したアイテムやサービスがアプリ内で利用可能に
この過程ではアプリストアが決済処理を代行し、セキュリティを確保しています。そのため、開発者はアプリストアのガイドラインに従ってアプリ内課金を実装する必要があります。
アプリ外課金との違い
アプリ内課金とアプリ外課金には、以下のようにいくつか特徴に違いがあります。
アプリ内課金の種類
アプリ内課金には様々な種類があり、それぞれの特徴や用途に応じて使い分けられています。主に4つのタイプに分類されます。
消耗型課金
消耗型課金は、購入後一度使用すると消費される課金方式のことです。もう一度必要になったり、新たに購入する場合には、その都度課金する必要があります。ゲームアプリでよく見られる形態で、ゲーム内のライフやエネルギーの回復アイテムを購入し使用するといった例が挙げられます。
非消耗型課金
非消耗型課金は、一度購入すると永続的な利用が可能となる課金方式です。アプリの機能拡張やカスタマイズに利用するケースが多いです。例えば、写真編集アプリの有料フィルターを追加する場合や、アプリに表示される広告を非表示にする場合などがあります。電子書籍なども、一度購入すればずっと読み続けることができるため、非消耗型課金に分類されます。
自動更新型サブスクリプション
自動更新型サブスクリプションは、定期的に料金が課金され、キャンセルしない限り自動的に更新される課金方式のことです。代表的なものに、動画配信サービスや音楽ストリーミングサービスが挙げられます。
特徴
- 定期的な課金(月額、年額など)
- ユーザーが解約するまで自動継続
- 常に最新のコンテンツにアクセスが可能
非自動更新型サブスクリプション
非自動更新型サブスクリプションは、一定期間のサービス利用権を購入する課金方式で、期間が終了すると利用できなくなります。基本的に自動更新はされないため、更新を希望する場合はユーザーが更新手続きおよび再度課金をする必要があります。オンライン学習アプリの期間指定コースの受講などが例として挙げられます。
特徴
- 自動更新ではないため、不要な課金を防げる
- 短期間の利用に適している
- 課金忘れの心配がない
ハイブリッド型の課金方式
最近では、複数の課金タイプを組み合わせたハイブリッド型の課金方式も増えています。課金方法を選択することができるようになるため、ユーザーニーズに対応しつつ、収益の最大化を図ることができます。例えば、基本機能はサブスクリプション型課金で利用ができ、追加アイテムを消耗型課金で購入できるようなモデルです。音楽制作アプリの「GarageBand」は、基本機能を無料で提供し、追加の音源などを非消耗型アイテムとして販売しています。
アプリ内課金で販売できるもの
アプリ内課金では、様々なデジタルコンテンツや機能を販売することができます。ここでは、一般的に販売可能なアイテムや機能について詳しく解説します。
機能拡張
アプリ内の追加機能を購入することで機能を拡張できるものです。基本機能は無料で利用できる場合が多く、高度な編集ツールやバックアップ容量の増加などができるため、アプリのカスタマイズを行うために販売されます。
デジタルコンテンツ
電子書籍や音楽、動画などのデジタルコンテンツも、アプリ内課金で販売することができます。電子書籍アプリでは、小説や漫画、音楽配信アプリや動画配信アプリでは、楽曲のダウンロード、動画のレンタル・販売がされています。ゲームアプリ内で購入できるアイテムなども、デジタルコンテンツのひとつです。
サービス
データの転送など、1回使い切りのサービスや、サブスクリプション型で継続的に利用するサービスも販売が可能です。例えば、音楽配信アプリの「Spotify」は、無料で利用することも可能ですが、月額料金を支払うことで広告を非表示にしたり、オフライン再生ができるようになります。
アプリ内課金で販売できないもの
アプリ内課金は、販売が禁止されているものもあります。主な例として下記が挙げられます。
- 違法なコンテンツや商品
- アプリストアの規約に違反するもの
- 他のアプリやウェブサイトへの誘導を目的としたもの
- 個人情報や機密情報
ユーザーの安全が守られないようなもの、健全なアプリエコシステムを維持できなくなるものは、基本的に販売することが出来ません。
アプリ開発者は、このような規制や条件を必ず確認し、遵守する必要があります。
アプリ内課金のメリットとデメリット
アプリ内課金のメリットとデメリットを、ユーザー目線と開発者目線に分けて解説します。
ユーザーにとってのメリット
外部サイトへ遷移することなくアプリ内で決済が可能です。決済完了から利用までがシームレスなため、手間がかからず使い勝手が良いという点がメリットです。
ユーザーにとってのデメリット
一方で、アプリ内課金の場合は、プラットフォームが定めた決済方法でしか支払いができないというデメリットも存在します。定められた決済方法以外で購入したくてもできないため、柔軟性に欠けるという点でユーザーにとってはデメリットとなってしまうでしょう。
開発者にとってのメリット
アプリ内課金は、App StoreやGoogle Playなどのプラットフォームの仕組みを利用します。そのため、課金の仕組みをゼロから構築する必要がなく、導入のハードルが低いという点がメリットです。
開発者にとってのデメリット
前述した通り、AppleやGoogleなどのプラットフォームの仕組みを利用するため、手数料を支払う必要があります。また、アプリ内課金の場合、金額をプラットフォーム側が定めた価格テーブルに合わせる必要があり、自由に決められない点もデメリットといえるでしょう。
各課金タイプの市場シェア
アプリストア全体での各課金タイプの市場シェアは、年々変動しています。最新のトレンドとしては、サブスクリプション型の成長が著しいことが挙げられます。総務省の発表では、音楽配信サービスにおいて、サブスクリプション型課金とダウンロード型課金(非消耗型課金)の売上高が逆転したというデータもあり、今後もサブスクリプション型の市場シェアは伸長する予測となっています。
また、アプリケーション市場は、ゲームアプリのほか、学習アプリや翻訳アプリ、健康管理アプリなど、更なる拡大が見込まれています。
参考:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd105210.html
アプリ内課金の法的規制
アプリ内課金には、消費者保護の観点から様々な法的規制が適用されるため、実装する際には以下の点について注意が必要です。
表示義務
課金の内容や金額、利用条件などを明確に表示する必要があります。特に、継続的な課金(サブスクリプション)の場合、解約方法や更新タイミングなどの情報も明示しなければなりません。
未成年者の保護
未成年者による過度の利用を防ぐため、年齢確認や利用制限機能の実装が求められます。また、保護者の同意なしに高額な課金を行えないような仕組みも必要です。
個人情報保護
課金に伴って取得する個人情報の扱いについては、個人情報保護法に基づいた適切な管理が求められます。
【番外編】Appleのアプリ外課金の規制緩和
元々Apple社は、収益につながらないアプリ外課金に対して厳しい規制を行っていました。
しかし、2022年以降この規制が緩和されました。(※1)
音楽や動画、書籍などのデジタルコンテンツを購入、またはサブスクリプションで閲覧できる「リーダーアプリ」においては、外部Webサイトにアプリ利用者を誘導するリンクを設置し、購入を実行させることが可能になっています。この規制緩和により、アプリ提供事業者はアプリ課金方式をより自由に選択できるようになりました。
自社サービスや提供するアプリに適した課金方式を導入することで、収益効果の最大化につながるとともにユーザーニーズにも柔軟に対応することができるでしょう。
(※1)参照:https://www.apple.com/jp/newsroom/2021/09/japan-fair-trade-commission-closes-app-store-investigation/)
まとめ
ゲームアプリで利用するイメージが強いアプリ内課金ですが、モバイルアプリ市場が急速な成長をする中で、ゲーム以外の分野でも活用されるケースが増えています。アプリ内課金の活用は、アイデア次第でより魅力的なアプリ開発・サービス提供につながるといえます。
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